ボクらのチカラをひとつに。おかやまいっぽん


※以下の文章は、「人権21 調査と研究 2016.4 No.241」に寄稿した原稿を許可をいただき掲載しています。

伊東 大輔(いとう だいすけ)プロフィール
伊東大輔
1979年、福井県小浜市生まれ。若狭湾の原発建設反対運動をしていた親に育てられ、中学のころに小出裕章・広瀬隆・藤田祐幸などの講演会を聞いたことをきっかけに、原発・エネルギー問題、環境問題に関心をもち活動を始める。
2001年にD-mediaCreationsを設立、インターネットを活用した広報活動で中小企業・NPO・政治家などの活動をサポート。
Web・グラフィックデザイン、映像制作、音楽制作、イベント企画・運営のサポートなどの業務を行う傍ら市民運動に関わる。
3.11以降はIWJ中継市民ボランティアとしても活動。情報発信の在り方に重点を置いて、独立メディアとして岡山エリアの情報を伝えるためにCUMAゴコロ(http://cumagokoro.net/)を立上げ運営する。
2015年9月17・18日夜、岡山駅前での街頭宣伝「届け主権者の声 国会前PublicViewing」を主催。
2016年2月28日設立の「おかやまいっぽん」の事務局を担当。

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おかやまいっぽん設立記者会見

3月7日おかやまいっぽん設立記者会見2016年3月7日、勤労者福祉センター3階の小さな会議室にマスコミ各社が詰めかけ多くのカメラが向けられる中で記者会見が始まりました。
安保法制に反対してきた岡山の市民が集い、約1ヶ月半をかけて話し合ってきた成果と今後の活動予定を発表しました。
ここに至る道のりは、2015年11月・12月と岡山市九条の会連絡会とおかやまいっぽんがそれぞれ開いた野党共闘・野党協力を求める集会後の話から始めることになります。

なお、2016年2月28日に設立した「おかやまいっぽん」は、正式名称「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求めるおかやまいっぽんの会」として、新しくできたものです。それまでにも活動していた、おかやまいっぽんの名前を使っていますが、呼びかけ人として新たに募ったメンバーで構成されています。便宜上この文章では「新おかやまいっぽん」と表記していきます。

デモから政治の場へ

2015.9.17「届け主権者の声」の様子 写真:加藤晋平
さらに時間を少し巻き戻して、ターニングポイントを振り返って行きたいと思います。
国会で安保法制の審議が行われる中、国会前や全国での動きと同じく、岡山でも多くの市民が反対の声をあげ、これまで声を上げてこなかったような人もその輪に加わりました。
同時にいわゆるデモという表現には参加出来なくても、それぞれの方法で意見表明をする人や、日常の話題にも安保法制や政治の話題が増えていたように感じています。
そして国会では「かまくら採決」が行われる中、岡山では総掛かり行動実行委員会の街宣とともに、わたしがCUMAゴコロ名義で企画した「届け主権者の声 国会前PublicViewing」(9月17日・18日)を行い、SEALDs型の街宣が起こらなかった岡山で、国会前と連動した新しいスタイルのデモを求める人の受け皿となりました。
同時に、ここでも顔を合わせた人たちが「野党は共闘!」という国会前の声に連動するように、10月以降に政治の場へ直接声を届けていくアクションでも再び顔を合わせていくことになります。
その後のハシワタシ主催の「2016参院選勉強会」(第1回=11月13日、講師=座間宮ガレイ・第2回=11月22日、江田五月参議院議員インタビュー)や、おかやまいっぽん主催の「野党協力を応援します」(12月12日)の状況については、すでに本誌2016年2月号の坂田さんの原稿で詳しく触れられているので割愛します。
一方で、安保法制や安倍政権のやり方に反対や疑問を持っていても、デモという表現手法に違和感を持つ大学生もいて、実際に届け主権者の声の場に友達と通りかかった大学生が、冷ややかな感想を持っていたという話も聞きました。
SEALDsの動きが盛り上がったものの、その表現には参加できないという人の方が多数で、これは大学生の世代に限らず、デモという表現に対しての反応として全世代で世代ごとに言えることです。
政治の場へ行動が移っていく中では、無党派層という形でこういった人たちを意識していくことになります。

理想と現実のギャップ

2015年12月に入ると、なにかの渦に巻き込まれるかのように野党各党との調整を並行していました。
連日のように、各政党の方とお話をして、ある日の夜には維新の党の県組織幹部と話をして、翌日は日本共産党、民主党、社民党の県組織幹部とそれぞれ話をしているということまであるほどでした。
そんな中で、各政党の本音にも触れ、理想としていた候補者一本化と野党協力の形では出口にたどり着かないという厳しい現実にも直面することになります。
その経験から政治の場へ声を届けていくためには、わたしたちがまずチカラを合わせてひとつになっていく必要があると感じました。目標を同じくする人たちが集まり、意見を集約した上で具体的な政策として提示をし、野党協力の輪へ自らも入っていくことが必要だと感じました。
そのためには、まず自分たちが、しっかりと議論をできる場を作るということで「2016参院選市民協力懇談会」を企画します。こちらが日程調整をする中で、同じような問題意識を持たれていた岡山市九条の会連絡会さんと連携を取ることができ懇談が実現しました。その懇談の場で継続的な物へと繋げるため次回の懇談として作っていた企画を提案しました。

2016参院選市民協力懇談会

懇談会の初回となる岡山市九条の会連絡会主催懇談会を含め、結果的に以下の様な日程で計6回の懇談会を行いました。

2016年1月14日 岡山市九条の会主催懇談会
2016年1月24日 第一回2016参院選市民協力懇談会 (呼びかけ=岡山市九条の会、おかやまいっぽん、ハシワタシ)
2016年2月 7日 第二回2016参院選市民協力懇談会
2016年2月14日 第三回2016参院選市民協力懇談会
2016年2月21日 第四回2016参院選市民協力懇談会
2016年2月28日 第五回2016参院選市民協力懇談会

懇談会の一場面。全体で議論をしている様子。毎回最低でも2時間、メインの議題は設定しながらも議題にとらわれない活発な議論が交わされました。
日程の都合などでメンバーの入れ替わりはあるものの20名前後が参加し、高校生から80代まで、所属や職業、立場もバラバラな多種多様な個人が集いました。

懇談会での議論のメインテーマは以下の3つです

  1. 集った自分たちの目的(安保法制の廃止と立憲主義の回復)を達成するためにどういう形で政治と向き合っていくのか?
  2. 政治と向き合っていくために自分たちの目的を共有できる趣意をまとめること
  3. 趣意をもとに政治の場で実現したいことを具体的な政策に落とし込んで提案すること

同時に議論を進める中で特に気をつけたことは「発言が特定の人に偏らないこと」「可能な限り全員が意見を出し、その意見を反映して行くこと」の2つです。
そのための工夫として、第二回からはワークショップ形式でのグループワークを行いました。毎回テーマを設けて5人程度のグループに分かれて意見を出し合い、出た意見をグループ間で共有するためのまとめの時間を経て、テーマ毎の意見集約をしていきました。
懇談会の一場面。ワークショップ形式でのグループワークをしている様子。
多種多様な個人が集まり議論を始めたため、当初は「特定の人を応援するためにものではないのか?」「自分たちで統一候補を立てて参院選に望むべきだ」「これまで運動をしてきた人の意見が通って、経験の短い人の意見が通らないのではないか?」など、統一候補のことから懇談会の運営に対してまで、様々な話題も出てきました。
一方で情勢も刻々と変化していきます。事務局レベルでは各政党とも情報交換をしながら、最新情報の共有やこれまでの岡山県内での国政選挙の状況について、次の参院選で自民党が2/3以上の議席を確保した後に起こるであろう自民党改憲草案での改憲、特に緊急事態条項の勉強もしながら、少しづつ議論を深めていきました。
懇談会の一場面。ワークショップ形式でのグループワークをしている様子。
全ての意見を反映出来たわけではないですし、運営にももっと上手く出来るところもあったのは自覚しています。それでも可能な限りの意見を反映した設立趣意書は第六回を経て第9稿まで達したところで完成しました。
会の名称も市民連合をはじめ、様々な案が出て検討をしましたが「おかやまいっぽん」という響きより良い案がないこと、これまでの活動などで政党にも名前が浸透していることなどから、通称としてそのまま利用することになり、正式名称として「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求めるおかやまいっぽんの会」として設立することになりました。

これまでの選挙データと分析

さて、ここで少し岡山県内での国政選挙結果のデータを振り返って分析してみたいと思います。
最新の国政選挙は2014年末の衆院選ですが、今回注目したいのは、直近2回の参院選での与野党得票についてです。

2010年参院選(投票率56.97%):山田みか(自民党)=325,143票、江田五月(民主党)=474,280票、垣内雄一(日本共産党)=65,298票
2013年参院選(投票率48.88%):石井まさひろ(自民党)=490,727票、高井たかし(無所属)=180,864票、かきうち京美(日本共産党)=65,455票
データシート

それぞれ、江田五月氏と石井まさひろ氏という知名度の高い候補者が勝っている選挙ですが、注目したいのは負けた側の得票です。
つまり、勝った側の知名度が高いだけに、負けた側の得票はそれでも投票した手堅い票=それぞれの基礎票に置き換えやすいという状況です。
比較するには投票率が違うため、仮に最新の有権者数(2015年9月2日現在1,566,428人)を元に投票率50%で置き換えて比較をしてみます。

与党基礎票(得票率37.80%)=296,055票
野党基礎票(得票率32.86%)=257,364票
無党派層票(29.34%)=229,795票
過半数=391,607票

この数字を基にすると与野党の基礎票差は38,691票です。しかし過半数までにはそれぞれ10〜13万票程度が必要です。
つまり、この時に野党統一候補が自民党候補を上回るためには、38,691票の基礎票の差を補いつつ134,243票の無党派層の票が必要ということになります。
この数字を見ても野党共闘が安保法制の廃止と立憲主義の回復への最低条件であることがわかります。
野党共闘をした上で、無党派層の票をどうやって獲得していくのかが目的を達成するための本題となります。

ボクらのチカラをひとつに。

おかやまいっぽん ボクらのチカラをひとつに。
時間軸は冒頭の記者会見へ戻ります。
新おかやまいっぽんが設立し野党共闘とその後の動きに向けて、チカラをひとつにできる場を用意できたと思っています。
この場が有効に機能するかどうかは、わたしたちとこの文章を読んでいただいているみなさんがチカラをひとつにできるかどうかということになります。
記者会見以降で、翌日3月8日には「おかやまいっぽん#激おこ!参院選勉強会」と題して、座間宮ガレイさんを講師に勉強会を開き、3月9日と13日で、野党4党と候補予定者2名に対して、共通政策での候補者一本化と野党協力の提案とお願いに伺っています。
この冊子が出来上がる時点で情勢は変わっているかも知れませんが、書いている時点では、各政党で持ち帰って協議をしていただくとともに、候補者一本化では民主党岡山県連・日本共産党岡山県委員会の二者での協議をしていただくようにお願いをしています。今後も情報交換もしながら、共通政策での政策協定の締結と候補者一本化、そして野党協力体制の構築に向けて動いていきます。
しかし、この動きは目的達成に向けてのファーストステップです。
ボクらのチカラをひとつにして向かうのは、安保法制の廃止と立憲主義の回復です。
そのために「おかやまいっぽん」という場を目的を共有する誰もが使えるプラットフォームにしたいと思います。
このアクションに積極的に参加し、賛同者の拡大や運営にご協力いただける方を、呼びかけ人として募集しています。呼びかけ人の方は呼びかけ人リストへの氏名掲載をさせていただき、全体会議など運営に参加していただけます。そこまでのアクションはできないけれど、趣意には賛同するという方は、ぜひ賛同者になってください。それぞれ申込については詳しくは以下の事務局までお問合せください。 おかやまいっぽんの情報はホームページやSNSで発信している他、呼びかけ人や賛同者の方へはメールでも情報をお届けします、 今後、おかやまいっぽんのポスターなど、広報物を作って広めて行きます。ぜひ一緒に動きを作ってください。
懇談会で議論をすすめる中でも、自分たちの目的を持って政治参加のための議論をしているこの状況が、民主主義をやり直してるんだと感じました。
長期的には、こういった議論ひとつひとつが、誰もが政治に関心を持って参加していくという意識に繋がっていくことを望んでいます。

おかやまいっぽん
Webサイト= http://okayama1pon.net/
twitter= @okayama1pon
facebookページ= https://www.facebook.com/okayama1pon/


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